2012年3月23日

ねーちゃん

書くことがないので、自分のことじゃないことを書く。



姉は3人いる。
でも、「ねーちゃん」と呼ぶのは
一番上の姉だけだ。
あとの2人は名前で呼ぶ。
それは今も変わらない。

ねーちゃんは7つ上。
針仕事が得意だ。
小学校5年生のとき、
名古屋帯を縫う宿題が出た。
どうしてもうまくできない。
同じところで間違えてしまう。
そこでねーちゃんに聞くと、
「明日までにできればいいのね?」
とさっさとやってしまった。
翌日、学校に持って行くと、
「よくできているわね。」
と先生がたいそう褒めてくださった。
そして、先生がみんなに見せた。
あのときは恥ずかしい思いをした。


ねーちゃんは優しい。
小学校の2年生で転校した私を
さびしい思いをしているのではないかと
毎日毎日送ってくれた。
帰りも迎えにきてくれた。
優しい手だった。
奉公で3ヶ月家にいなかったときは
本当にさびしかった。


ねーちゃんに恋人ができた。
父はそれはそれは心配で
ねーちゃんがでかけるときには
妹3人のだれかを一緒に連れていくように言った。
私はまだ幼く、
2番目の姉は頑なにいやがったので、
3番目の姉がいつも付いていった。


父は厳格な人だった。
「腰が重くなるから
女は読むものじゃない。」
と漫画や小説を読むことは禁止されていた。
それでも読みたい私たちは
布団の下に隠して
寝る前に読むという習慣がついた。
ある日、それが見つかって
布団をひっぺがされるまでは。


下駄が揃っていないと
絶対にあがってこない。
父が帰って来る前に
あわててそろえた。


そんな父が
娘たちにうるさく言わなくなった。
ねーちゃんが死んだ。
結核だった。


病院に入ってからは、
葬式まで会えなかった。
両親は
先に逝ってしまった娘の葬式には出ることができず、
親戚のおばさんとねーちゃんを見送った。


ねーちゃんは7つ上。
針仕事が得意だ。
優しい姉だった。



あたしのおばあちゃんの話から
60年以上前のお話

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